エヴァンゲリオン短歌
終局の続きの続きによせて
終幕の後の座興と戯(おどけ)けつつ少女一人の幸を探しつ
幻影の差し出した手を握らずに君は使命を明るく語る
電灯のような儚き夢を見てつけては消して消してはつけて
銀幕の中から半歩抜けだした君に思いが届けと願う
幸せを探す代わりに眠る人辿り着くまで添い寝する人
同じ顔同じ名前の違う人まだ幸せと思えない人
結末を戯けて語るその顔に救われる気がしたこともあり
結末を迎えた後の君何処どこかで会える気もする今日も
春の日を待ちつつ別れの季節来て君の向かうは何処か知らず
同じ顔あなたの知らぬ服を着て隣に立つはいかな気持ちか
夢の中憧れだけが過ぎ去りて寂しがらずや目覚めし君よ
流れ行き出づる思いも知らぬまま日の目を見るは君の憧れ
憧れも恋も矜持も傷物になったはずだが笑顔が眩し
幸せになれたかなんて聞けないが君を信じて君を愛する
身勝手に愛する権利与えられそれでも好きと悟ったこの日
あなただけ歳を取らぬと知っていたそれでも思うこの歳月を
灯火はいつも赤々燃え続くまるであなたの衣の如く
赤色を見るたびあなたを思い出す赤々燃えるあなたの心
愛すると言えないほどの気高さと悲しさたたえあなたは何処
見送る者のたちの歌
あなただけ貧乏くじをひきながら文句も言わず生きるのですか
憧れと恋愛もまだ分けられぬそんな少女を死地へと送る
平和なら愚かさもまた許された許されぬまま戦場は呼ぶ
矜持だけ支えに生きる者もまた死地に送るか我らは鬼か
あなただけ殺すわけにはいくまいと思う者はいるそう信じたい
返り血も流す血もまた隠すのかあなたの赤い衣に涙
人類と少年少女を天秤に我らの仕事は褒められもせず
愛情を与えられずに生きてきて与えられれば嫌悪も道理
英雄になれない我が身だが貴方英雄などにならなくてよい
たとえ明日人類滅ぶ時来れどあなたの犠牲無きを望んで
幸せの姿形は知らねどもあなたが選ぶことができれば
顧みもせず行くあなた美しくそれを見ながら泣く浅ましさ
十四、五で人の定めを知るか君知らぬと思う生きて帰れよ
あなただけ殺すわけにはいくまいと思いこそすれ我は銃後に
粉々に砕け散るのか思春期の君の破片が心に刺さる
第三村
ここもまた楽園ならずしかしまた人と人との心が通う
「あの時に傷つけし人」思いしか君がいたから守れた命
卓上の梅酒を覗く君愛しいずれ味わうことを願いて
人間は孤独ならずや稲作の泥に塗れて見上げる雲よ
隣人もあの地に生きた人ならば守った相手に出会う村かな
この村で名もなき人を呼ぶならば守るべき人愛くれる人
この世界戦士ばかりが人でなく名もなき人の優しさ沁みる
押入れに入れたる服の持ち主は生きているのか知らずに纏う
道楽で田舎暮らしをやるでなくそれでも明るく振る舞う人よ
文明を知らぬ子もまた生まれ出て失いしもの忘れたつもり
14年見た目変わらぬ友と会い守られるべき子供と思う
酒瓶の底沈めたかその思い歌う声にも応えぬ友に
喪失の意味を知る人その心隠し振る舞うかつての友に
いろいろとあったものだと語る友その苦労だけ未だ分からず
複製と言うな君とて人間の暮らし喜び知るべき子供
記憶なき少女を皆が受け入れる村になるまでいかな苦労が
英雄も市井の人もみな人と思えばこその別れが悲し
統計で数えし民といま会うて戦う意味を君また知るか
あの頃は出会えぬはずの人々と暮らしを共に生きるかここで
守るべき村と言いつつ村人と会わぬ貴方は寂しがらずや
ここもまた終の住処にあらざるや然らばどこに骨を埋めるか
眠りすら取らぬ体となるならば夢を見るのは何時となりしか
十四、五の体に衣纏わずに平気でいるはそれも悲しき
自らの体を兵器そう定む君は命を如何に使うか
片目だけ捧げてきたか戦場の常とは申せ彼女は少女
誰がため戦うべきか知るならば君を愛する人を愛せよ
寄る辺なき想い隠して戦場に居るを使命と定めし人よ
語られぬ思いもあるか戦場の船に乗るのもまた生き残り
天翔ける船で戦いその下で生きる人らの支えで生きて
あの日少女だった人へ
「ただいま」と見知らぬ部屋に上がり込み他人ならずやその時以来
犬の仔を拾うわけでなし「引き取る」と言いし女の心はいずこ
親友の怒鳴りし声を電話越し聴けど誤魔化す寂しき本音
君の影指し示すのは我が心誰も知らずに生きてきたのに
我が心覗き込まれる心地して君の愚かさ我の愚かさ
寄る波の如くにあらず不可逆の人生故に君を引き上げ
駆り立てたあと君侵す罪科を背負わば我の罰となろうか
自らの願いが罪になろうとは思わぬ先の見知らぬ人よ
還らざる歳月君にいかにして償いうるか聞かずに去るか
冷徹の仮面の下の思いまで語り合えずに持ち去られ君
ゴーグルの奥に涙は浮かぶのか語らぬままに死地へ赴く
かきあげた髪に面影浮かぶ君変わらぬ姿涙も浮かぶ
親友が戦友となる時代過ぎ友の思いを継ぐのも戦(いくさ)
命まで捧げるまでの歳月に守れぬ命いかほどありや
「我が息子」そう言えぬまま逝く人にいかなる思いあるかと思う
君のこと世人は語る英雄とそうでない世であればよかった
人類の歴史語らばその中の主役となるか役目も重く
英雄を求める世界不幸なり求められるもまた不幸かな
浜辺から駅へ、その向こうへ
「父親は殺すべきもの」見送られ来たりて見るは孤独な男
愛情を知らぬわけでなしその人の語る孤独に苦悩が滲む
片割れの如き相手を失いし男にかける言葉はありや
散髪の髪を撫でつつ人間の誇り輝き説く友もいる
飄々と戯(おど)け振る舞う君知るかそれに救われ生きゆく人を
大空を見上げた時に降りてくる如き出会いもある街だった
君もしも願い叶うというのなら他人(ひと)の幸せ願うか今も
永遠にならざる時を生きながら次元の果ての景色を知るか
人一人失うことも悲しけれそう思うから砂浜へ行く
君にまた会うべく来たり砂浜の伝うるべきは「世界麗(うるわ)し」
他人(ひと)もまた優しからんと君知るか伝えんがため浜辺へ行かん
知らぬ世に目覚めし如き青年の面影浮かぶ笑顔を愛す
君もまた何処に生まれいつ来たから知らぬままでも友と呼びたい
恋人か友か家族か知らねども君と愛する人を愛する
首枷のごとき名残を君捨てて愛しき他者と手を取る日かな
鉄道のレールの向こう交わらぬ道をゆけども並走はする
君が生き闘いし街去りゆきて我らと同じ世界にいるか
爽やかに駈け出した先知らぬ街君もまた生き暮らしていくか
何処とも知らぬ世界に辿り着き如何に生きるか愛しき君よ
駆け上る階段の先「我が街」と言える日が来ることもあるかな
街並みに消えゆく君を見送りつ明日も生きると静かに思う
愛情と出会いを誇りと歌う人失う予感を知り歌う人
劇場も明るくなれば銀幕の夢幻を胸に帰らん
現実を生きよというが皆共に現実を生き時に夢見る
大海の如く大きな物語そのひと雫たらんと思う
まだ知らぬ物語ある予感して描く人あらばそれを待ちつつ